教材名 | ベーシック言語による機械制御 |
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教材名2 |
教材ID | 132 |
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教材作成者名 | 佐々木 進 |
教材作成日 | 1994-07-10 |
改訂情報 | |
ジャンル名 | 高度教材 |
分野名 | 機械系 |
業種名 | 機械部品製造業 |
職務名 | 自動化技術 |
職務構成名 | 自動化システム活用 |
区分名 | 教材 |
職業名 | 機械技術者 |
1.はじめに 機械装置の自動制御にはシーケンス制御方式およびフィードバック制御方式等が適用され,工場等の省力・自動化が進んでいる.この省力・自動化では繰り返し運動等を行うシーケンス制御方式が比較的多く使用され,フイードバック制御方式はあまり多くない現状にある.このような機械装置をシーケンス制御する電気的方法は,古くからの電磁リレーを使用した有接点リレー法から始まり,制御状態をリアルタイムで集中監視できるコンピュータ法等に発展している.> 本結果報告の能力開発セミナーの内容はコンピュータ法の制御に関係し,シーケンス制御パソコンプログラムの作成に関するもので,制御器にパソコン (NEC PC-9801系) を使用し,プログラムの記述にBASIC言語(NEC N88-BASIC)を使用して機械装置を制御している.> また,本能力開発セミナー名「ベーシック言語による機械制御」ではシーケンス制御方式だけでなく,フィードバック制御方式等を網羅した制御の内容が望ましいが,前述の多く使用されているという理由から,シーケンス制御方式に限定して能力開発セミナーを実施した.> この結果報告の内容は実施した能力開発セミナーの事前準備,セミナーの実施および受講生の反応について述べている. 2.能力開発セミナーの事前準備 本能力開発セミナーは制御プログラムの作成法を学習しながら,並行して制御実験を行い進行する設定である.この制御実験に使用するハードウェアはパソコン(PC-9801系),I/Oボード(マイクロサイエンス社,SWR-6198BPC),信号入力・出力確認実験装置,実用機器適用の制御盤(電磁開閉器等搭載)および三相誘導電動機を必要とする.また,パソコンソフトウェアMS-DOS,N88BASICも必要である. (1)信号入力・出力確認実験装置作成 (人数分) この信号入力・出力確認実験装置はセミナーに先立ち,人数分作成する必要がある.これを前記の使用パソコンに接続して,実習で作成した制御プログラムの適否の制御確認実験を行う. (2)実用機器適用の制御盤の作成 (一組) 実用機器適用の制御盤は一組だけ作成した.また,三相誘導電動機を一台必要とする.この実験セットの内容はパソコン,I/Oボード,三相誘導電動機,電磁開閉器,押しボタンスイッチおよびソリッドスティトリレー(SSR)等で構成され,パソコンを制御器として,三相誘導電動機の正転・逆転2 箇所運転制御ができるようにしてある.パソコンのDC5[V]と三相誘導電動機のAC200[V]間のインターフェイスはSSR(DC24[V])で行っている. (3)サンプル制御プログラムの準備 (人数分) また,ソフトウェアとしてはMS-DOS,N88-BASICのシステムフロッピーディスクおよび作業用のフロッピーディスクが必要である.なお,作業用のフロッピーディスクには自作テキストにあるサンプル制御プログラムを格納して置く. (4)テキストの作成 (人数分) 本能力開発セミナーの説明用にテキストを作成し使用した.各章ごとに簡単にテキスト作成の考え方を述べる. 第1章シーケンス制御パソコンプログラムの効果的作成法と確認法では制御プログラムの作成法(流れ図方式,論理演算方式,ブール代数方式およびタイマ接点の扱い),制御シミュレーションおよび制御プログラムの作成法三方式の比較について記述し,実習で作成した制御プログラムの適否の実験的確認法と実用機器への適用を提示している. 第2章BASIC言語と入力・出力BOXの使用法のBASIC言語では,受講者がBASIC言語を修得していることを前提としているので,入力命令 (INP) と出力命令(OUT)の二命令語だけについて使用法を説明している.また,実際にINPとOUT命令語を使用して基本プログラムの確認実験をしている.入力・出力BOXの使用法では本能力開発セミナーで使用するI/Oボードに外付けの自作信号入力・出力確認実験装置の内部結線と使い方を説明している.つぎに,この実験装置の入力状態と連動するCRT表示例を記述している. 第3章自動制御応用プログラムでは基本の有接点シーケンス制御回路図を提示し,このシーケンス制御回路図を基に制御プログラムの作成実習を行う.ここでは,考え方,流れ図およびプログラム例を記してあり,制御プログラム作成の理解を助けるようにしている. 第4章流れ図,論理代数およびブール代数方式による制御プログラム比較では第3章で使用した基本の有接点シーケンス制御回路図について,第1章で述べた制御プログラムの作成法の三方式について,実証的なサンプル制御プログラムを提示してある. 第5章制御プログラムのCRT表示例では,第3章で提示した中から簡単な制御回路図について,入力と出力の制御状態がCRT表示と連動するBASICプログラムを例示してある. 第6章実用機器適用の実際では,これまでに記述した制御プログラムを使用して,三相誘導電動機を運転する場合,実際の制御機器の使用状態を示してある.これにより,実際の制御系の設計への橋渡しを目標としている. 作成したテキストはパソコン制御実習を行いながら使用すると,最も効果がでるように配慮してある. 3.セミナーの実施 (1)受講生 過去5年間の本能力開発セミナーの受講生数は21名になっている.受講生の多くはパソコンに慣れ,親しんでいたが,中にはパソコンの使用を懸念する者もいた.このセミナーの受講生は,BASIC言語とシーケンス制御分野を知っていることが,必要条件のような気がする.参加者に両分野の初心者はいなかったが,シーケンス制御の初心者はいた. (2)講習の場所 講習場所はパソコン(PC- 9801系)21台を集中的に配置してあるパソコン教室で,主に能力開発セミナー用に開放されているところを使用した.このように,制御プログラムの作成実習は通常のパソコンのI/Oスロットに,自作の信号入力・出力確認実験装置を装着してできる.これで,一人,一セットのパソコンと制御動作の確認実験装置を使用でき,効果的に講習ができる.また,実用機器適用の実際に関する制御実習は三相200V電源の関係から,別室に一組だけ準備して対応した. (3)セミナーの内容と消化日程 能力開発セミナーの内容と消化日程をつぎに示す. ・第一日目(6H) 1.シーケンス制御パソコンプログラムの効果的作成法と確認法 2.BASIC言語と入力・出力BOXの使用法 ・第二日目(6H) 3.自動制御応用プログラム ・第三日目(6H) 4.流れ図,論理代数およびブール代数方式による制御プログラム比較 5.制御プログラムのCRT表示例 6.実用機器適用の実際 また,上記はセミナーに先だって準備した,自作テキストの内容でもある.このように,このセミナーはBASICに関しての知識をある程度有し,機械制御の概要を知りたい者,あるいは生産自動化設計に従事する者を対象としている. なお,本能力開発セミナーは1日6時間で3日間の合計18時間を標準としているが,4日間の合計24時間で実施したときもあった. 。 5.受講生の反応 アンケートの中から,二名の受講生の感想文を,受講生を知るための資料として掲載しておく.(原文のまま) 受講生:附田文人(受講当時36才) 研修を終えて感じたことは3点あります.①今回制御用に使用した言語はBASICです.C,PASCAL,アセンブラなどパソコン言語はいっぱいあります.しかし,リアルタイムに検証できるインタプリタのBASICによる開発環境はコスト,時間的にも有利だと思います.②フローチャートの大切さです.基本的なことですが,プログラムの入力,分析,修正等のためにもしっかりしたフローチャートの作成が必要だと思いました.フローチャートをきちんと書くことが作業を早くさせます.③要望です.パソコンで開発したものはオンボードマイコンとして搭載し動かすのが実際だと思います.システムの立案,設計,検証,完成までの体系的な実習を通うして制御の実際を経験したいとおもいました.3 日間では到底無理でしょうか. 受講生:水戸貴志(受講当時21才) 今回,私が受講した「BASIC言語による機械制御」を基に,各制御回路から機械のメンテナンスまで幅広く学んでいけたら,と思っております.この研修会にあたり,普段はパソコンでワープロソフトとか,図形や表計算のソフトを使用したり,アプリケーションの組込・組替え等の使い方ぐらいしか行っていないので,BASIC言語というところに不安を感じました.けれども実際に研修を受けると,BASIC語は,自分の知ってる範囲内で少し安心しました. 以上受講生二名からの本能力開発セミナーに対する反応である.この感想文から受講生がなにを求め,なにを期待しているかが伝わってくる.特に,附田文人受講生からの期待である,「制御システムの立案,設計,検証および完成までを経験する制御の実際実習」については,フィードバック制御の要素も含んでおり,今後検討する必要がある. 6.おわりに 本能力開発セミナーの準備から実施までの結果を報告した.準備にあたり,信号入力・出力確認実験装置の作成および実用機器適用の制御盤の作成に多くの時間を要し,また,この実験装置を使って制御プログラムを作成しながらのテキスト作成にはより多くの時間を要した. 受講生には有接点リレーシーケンス制御回路図があれば,全ての図を制御プログラムに書き換えることができ,またこの制御動作の確認実験も簡単にできることを強調した.しかも,この方法が実際の機械制御に適用できることも提示し,仕事上に発生するであろう,つぎのステップへの橋渡しとした. |
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